メモ箱

映画の感想やポエムなど

【再掲】You can't hurry love.

※消してしまったブログに載せていた文章の再掲です
※ただの日記

 

中学生の時まで、片思いしては失恋することが多かった。男子はサッカー部、女子はバレーボール部に入っている子がクラスの中心で、剣道部に入りながら体育祭のリーダーとかをやっていた私は、「成績優秀だしリーダーやるようなタイプだけど、なんかちょっと変わった子」として、キラキラしてる子たちからは「自分たちとは違う人」みたいに接されていたと思う。キラキラしている男の子が好きになったりしたけど、その子は当然、キラキラしているグループ同士で彼女を作り、私の短い片思いは終わった。
 
高校生のときは、中学の時とはうってかわって、私は学校がバカバカしくなって、親に内緒でサボりまくった(校則がとても緩い、都心の学校だからこそ許される態度だった)。体育祭にも文化祭にも行かず、卒業式も秒で帰るような私は、高校には良い思い出が全くない。その代わり、他校に初めての彼氏が出来た。ただ、受験勉強とか色々な理由で、付き合いは1年くらいで終わった。愛とか誠実さとは程遠い、アクセサリーみたいな付き合いだった。
 
大学生になって、それまで生きてきた環境から、人付き合いの幅がぐんと広がり、ごくたまに、私のことを大好きになる人が現れた。3年間ほど同棲したり、既婚の人と不倫したり、よくありそうな話はひと通りではないけど経験したが、その当時付き合った人で今でも連絡を取り続けている人は誰もいない。何も残らない付き合いだった。
 
社会人になってから、逆に会う人は限定されていった。職場の人はじめ、仕事で関わる人に対し恋愛的な目線で見ることはなかった。同期同士で交際・社内結婚したり、上司と不倫している女の先輩とかがいたが、個人的には会社は「そういう場所ではない」と思っていた。そもそも、仕事の文脈で「あなたは女だから」って見られること自体が苦手で、今でも苦手意識がある。それでもたまに、何となく付き合った人もいたが、やっぱり何も残らなかった。気分が乗ったら寝る。飽きたら別れる。それだけだ。そもそも毎日に精いっぱいで、人に期待していないような気持ちすらあった。
 
恋愛に限らず、仕事がうまくいかなかったり、転職したり、東京以外のところに住んでみたり、色んなことがあった。どんなことがあっても、負けないで自分を保ち続けるのに、映画館と宇多丸さんのラジオがあればいいじゃないか……と、自分に言い聞かせるようになっていた。
 
そんな時、ある人にあった。一応は「大学のサークルの後輩」という立場の人だった。私が大学を卒業するくらいの時に入学してきた人で、名前だけは聞いたことがあるような気もするが、それまでまったく知らない人だった。ひょんなプロジェクト(プロジェクトって何だ……って感じですがプロジェクトとしか呼べないプロジェクトであった……)で一緒になってから、仕事(?)として頻繁に連絡したり打合せで会うようになって、私はその人が、何か質問したり意見を求めた時に、こちらの痒い所に手が届くような絶妙な内容を、しかも即答で出してきてくれることに、素直に「すごいなぁ」と思った。つまり、とても頭がいい人なのだ。年とかは関係ない、素晴らしいことだなと思った。個人的なやり取りもするようになって、その人が、単に頭がいい学生というだけでなく、独自の感性を持っている繊細な人だということが段々わかってきて、関心を持った。
 
初めは好奇心だった。この人はいったいどういう人なんだろう、これまでどんな人生を送ってきた人なんだろう。それは、仕事以外の付き合いで、他人ときちんと向き合うことすら少なくなって、映画と宇多丸さんだけあればいいやと思っていた私にとって、珍しい事件だった。
 
なので、今思うと自分でもちょっと図々しいなと思うけど、私はその人を映画に誘った。一応は先輩からの誘いということもあり、その人は来てくれ、映画の後、いろんな話をして、新宿から一緒に歩いて帰宅した。
 
それから毎週末、なんだかんだ会うようになり、3か月後、私たちは付き合うようになった。
 
喧嘩したり(私が一方的に相手の気持ちを「こうだ……」と決めつけていじけたりとかした……)、一方的に迷惑をかけたりしたが、そのたびに彼は誠実に話し合う姿勢を取ってくれ、「今度からこうしよう」と、関係を前向きに考えてくれた(出会った頃に感じたのと同じ、頭が良くて、課題解決能力に長けた人なのだ。年齢はまったく関係がなかった……)。
 
それどころか、彼は、私が映画と宇多丸さんのラジオが好きだという話をするや、それまでそんなに映画を観ない人だったのに、1人で映画館へ行ったり、デートで一緒に映画を観たり、宇多丸さんのラジオを聞いて感想を送ってくれるようになった。先週は、2人で『DAU. ナターシャ』を観た(『DAU. ナターシャ』!)。カップルで『DAUナターシャ』を観たという人、映画関連の仕事をしている夫婦とかじゃない限り(そんな夫婦いるのか?)、恐らく10人くらいではと思う……。 渋谷のイメージフォーラムで、『DAU. ナターシャ』自体の出来に唖然としつつ、半年前までだったら1人で観て、誰にも感想を言わず、宇多丸さんのラジオ聞いて「ふーん」と思っているはずだと思い、『DAU. ナターシャ』を一緒に見てくれる恋人が、これまでの人生からは考えられない、奇跡のように思った。
 
週末、たまに映画館へ行ったり散歩したりしながら、彼の家でパンとかケーキを食べて、日付が変わるまでくっついてる時間が好きだ。
成り行きのように生きてきて、目の前のことをやっているうちに、29歳になってしまったけど、自分の人生で何か1つだけ誇れることがあるとすれば、彼に会えたことだと思う。
だから、特に恋愛関係で、色んな男の人に傷ついたり、逆に傷つけたり、うまくいかなくて泣いていた28歳までの私に、「大丈夫だよ、焦らないで」って言いたい。
また、あまり考えたくないけれど、人生何があるかわからないなかで、それでも、「生きていれば『DAU. ナターシャ』を一緒に観てくれる人に出会える」という奇跡を経験したことは、私を少しだけ強くしてくれたと思う。
彼のおかげで、「幸せとは何か」を初めて知った。当たり前だけど、恋愛映画を何百本観ても、たった1つの恋には敵わない。