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【雑な感想】『マスカレード・ナイト』

いつにもまして、雑な感想です!

潜入捜査官(木村拓哉)×ホテルマン(長澤まさみ)という異色バディで、ホテル内で予告された事件を解決する映画『マスカレード・ナイト』を観てきました。原作は未読です。

一作目の映画『マスカレード・ホテル』は2019年(もっと前かと思ったら意外と最近だった)、映画を年に1回観るか観ないかの程度で、生涯ベスト(?)が実写版『ダンボ』という私の妹が、「犯人がわかった!!!」という理由で大絶賛しており、「そりゃ、娯楽ミステリー映画で最後に犯人がわからなかったら大問題だよ……」と思ったのを覚えています。

ちなみに妹は、家族で往年の犯罪映画傑作『スティング』を観た時、1人だけ何もわからなかったという経験がありました。映画鑑賞と一口に言っても、映像メディアへの感受性の素質とか、映画という文法への慣れによって、観る人によって受け取り方は全然違うんだなと、皮肉ではなく、映画が好きな人間の1人として勉強になる経験でした。『スティング』を観ていた時に1人だけ「全然わからない……」とつまらない時間を過ごした妹のことは、申し訳なさがあり切ないけど、1つの意見として大事なものと思っています。

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妹が大好きな実写版ダンボ。同じく観た母が「このダンボはCGなんだよ」と言ったら「当たり前でしょ?!」と、妹から理不尽にキレられていた

肝心の『マスカレード・ナイト』ですが、基本は映画『マスカレード・ホテル』同様、「迷惑な客が順番にやってきて、1人ずつ対処していく」というのが物語の構成で、グランドホテル方式は大好きですが、これはそれに該当するのか大変微妙はじめ、全体的になんか残念なのが前作同様で、観ているうちに「ああ、これ、そういう映画だった……」というのを思い出し、実家に帰ったような安心感がありました(大変失礼)。

ただ、前作よりは犯人エピソードはじめ「最初こうだった客が実はこう」という伏線は、きちんとあったのではないでしょうか? ただし、複数の伏線が混線状態であることと、フロアに分かれて配属されている潜入警察側のインカムやり取りがメインで話が進むことから、途中から何が何だかわかりづらくなってくることから、もう少しスマートな見せ方なかったのか……と、前作とは違う意味で思いました。たぶん今回は、妹はわからないと思います。

そんなことより、前回以上に、映像のエキセントリックさ(おかしさ)の印象が強かったのですが、こればかりは前作を見直してみないとわかりません。序盤、(見ていない人には極めてわかりづらいのですが)密告者からの告発文をプリントアウトするFAXの排出口→警視庁(?)会議室前方の大スクリーンへ、無意味にカメラが舐めるという、大変気持ち悪いカメラワークを4回くらいやってみせたのが、1回目で「うっわ何でこんなカメラワークしたの????」と「???」で頭いっぱいになったのが2回、3回と続き、1周回って斬新な映画なのではないかと思いました(斬新じゃないです)。

あとは、個人的に映画に対する持論で、「冒頭10秒でうけた印象とその映画全体を観てうけた印象はほとんど一致する」というクソ理論があり、つまり、冒頭10秒を極めて大事に観てるのですが、今作は冒頭は、木村拓哉の意味深なアルゼンチンタンゴのシーンでした。意味深なアルゼンチンタンゴシーンは結構引っ張って、ホテル・コルテシア東京の日常や、事件の発端が明かされてもなお、木村拓哉アルゼンチンタンゴを踊っている。しかも、木村拓哉アルゼンチンタンゴがうまいという設定と、事件の最終的な解決に、あんまり関係がない。

『マスカレード・ナイト』というタイトルが出る以前の段階で、ちょっと話が進んだと思ったら謎アルゼンチンタンゴにすぐカットバックされる、FAXの排出口→会議室スクリーンの気持ち悪いカメラワークが連続されるで、かなり疲れた状態になりました。

ほか気になったのは、警察側の動きの薄っぺらさ(大体右往左往してるか、「絶対に犯人を捜すぞ!」「はい!!!」しかしてない)、いざ容疑者を捕まえてからの尋問の荒さ(あんなに声荒げることある?)、「迷惑客に対しホテル側が一刀両断!」みたいな答えに対する「それでいいのか……?」など、一事が万事ツッコミたい。あとは前作引き続き、舞台となる高級ホテルが「こういうセット組んどきゃみんな『うわぁ高級ホテル♡』と思うでしょ」という、ディズニーランド的な安っぽさです(ディズニーランドを安っぽいと言いたいわけではない)。全体的に、全国版向けCMみたいな安っぽさ。でも、このシリーズは、それがいいのかもしれません。

長澤まさみの芸達者ぶりが本当に好きなので、今作は猫かぶりモードですが、予告編で流れた劇場版『コンフィデンスマンJP』新作を楽しみにしています。

 

観ていて思い出したのが、前作も、最後の最後にぶっ飛んだイリュージョン演出を出してきたこと。

東京の最高級ホテルという、日本全国の誰もが「」付で夢見る対象とする場所を舞台にした映画で、堂々とこういう映像文法をやってくるあたりが、この映画シリーズのことが何だかんだ、好きなのだと思います。