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映画の感想やポエムなど

観客A的シネマランキング2021(ベスト10作品)

2021年に映画館で観た映画は81本でした。そのなかから、勝手にランキングを発表します。
私のさじ加減すぎますが、割と「こんな映画、他に観たことない」と思ったものを、評価する傾向があります。あと、監督で映画を語りがちです。製作の方が決定権限強いはずなのですが、そこを把握するまでの知識がなく、わかっていません。

 

1位 偶然と想像
2位 DUNE/デューン 砂の惑星
3位 ドント・ルック・アップ
4位 べイビーわるきゅーれ
5位 ザ・スーサイド・スクワッド "極"悪党、集結
6位 ジェントルメン
7位 JUNK HEAD
8位 DAU. ナターシャ
9位 ファーザー
10位 竜とそばかすの姫

 

10位 竜とそばかすの姫
観た直後は「何これ!! 今年ベスト1位じゃ!!!」と思うくらい好きだったんですが、冷静に振り返ると、『美女と野獣』のそのまますぎる引用、中村佳穂の歌唱力、主題歌「U」を提供したKing Gnuの常田氏、カートゥーンサルーンやジン・キムといった世界のトップアニメーターたちの力、伊賀大介さんはじめとするファッション、などなど、細田守監督が各界のトップクリエイターを「これでもか」と集めた結果、底上げされている部分が大きい気がして(このメンツに声をかけ、協力してもらえている時点で、細田守監督はかなり凄いですが……)。
ただ、ラストの物議を醸す展開ふくめ、個人的には大好きで、劇場で初見時は号泣してしまいました。細田守監督自身が脚本を手掛けるようになって以降の作品(『未来のミライ』『バケモノの子』『おおかみこどもの雨と雪』)がどうも苦手だったので、次回作がどうなるか、本当に楽しみです。

 

9位 ファーザー
今年観た映画のなかで、1番怖かったです。ホラー映画以上にホラーで、思い出すだにゾッとする……。
でも、観ている間、めちゃくちゃ「え、どうなってんの?!?!」と面白かったですが、ただ面白いだけのびっくりホラー映画じゃなく、認知症という、いずれ誰もが関係するような題材を扱っているところが、本当に素晴らしいと思いました。我々にはホラーに見えますが、認知症の人には世界はこう映っている(んじゃないか)ということを、映画でしか表現できない方法で見せているのか本当に見事で。いつ、どの順番でどの人を登場させるか、美術をどう変えていくか、音楽はどうするかなど、とても作り込まれた完成度の高い映画だったと感じました。

 

8位 DAU. ナターシャ
映画作りの過程も信じられないし、内容も内容だし、ふざけんなと思いました(笑) 件の拷問シーン、たしかにキツい描写はありましたが、それよりも拷問する側の人が、本当にソ連で拷問やってたか何かの人なんでしたっけ?(うろ覚え) ←「なんだそれ?!」と褒めたい
酔っぱらって魚バンバン、酒飲んでは吐く後輩、延々と続く喧嘩、突然のセックス、最後の犬など、長い映画でしたが、なんだかんだ結構な割合の映像を覚えているんですよね。ふざけんな!!!(笑) ←とても、褒めている
今年観た他の映画だと、似た感じで(?)『MONOS』や『ジャスト6.5』があるのですが、やはり1番意味が分からない映画としてこれは凄いものを見たと思いました。

 

7位 JUNK HEAD
突如彗星のごとく現れたお化けコンテンツ『PUI PUIモルカー』と並んで、アードマンが没落した今(ひつじのショーン好きな方には申し訳ないのですが、『ウォレスとグルミット』や『チキンラン』を作っていた頃のアードマンの精神は死んだと思っている)、もう我々にはスタジオライカしかないのか……と思っていたところ、ストップモーションの傑作が突如、まさか日本から、出てくるとは思いませんでした。
これもまた、映画作りの過程が信じられないのですが、そんな映画なのにくだらない下ネタなどバンバン入っていて、きっちりエンターテインメントだったのが、本当の意味で志が高くて、凄い面白かったです。
ただ、赤ずきんちゃん(?)ぽい女性キャラクターの取り扱いや、監督本人のtwitterでの事件から、作り手としてはこれからが楽しみかな……という危うさも感じており、JUNK HEAD第1作がこんなにも世間から大絶賛されたことで満足してしまい、第2作が作られないんじゃないかと、そこが不安です(大変失礼な発言で申し訳ございません)。何年でも待つので、また、この作品の世界を味わえるのを、楽しみにしています!!!

 

6位 ジェントルメン
『ラストナイト・イン・ソーホー』で「英国紳士クソ」みたいな話が散々あったのに、恐縮してしまいますが、私は、ご機嫌モードのガイ・リッチー監督が大好きなんだよ!!!! ほんと早く『コードネームUNCLE』の続きを作ってほしい!!!!!!!
公開時は、今作最大の欠点として、予告編に使われていた「Sunshine Of Your Love」が劇中に使われなかったことで、本当にがっかりした……と思ったのですが、サウンドトラックを聞き返すと、オープニングタイトル時に流れた「Cumberland Gap」が、渋くて、かなり好きになりました。「Sunshine Of Your Love」、なくて大丈夫でした。

 

 

5位 ザ・スーサイド・スクワッド "極"悪党、集結
事前知識の差によって、面白さが評価割れしそうなところが評価できないんですが、個人的にはそれでも好きではあったので、入れてしまいました。
これを面白いと思う人は、アメコミ映画に慣れていて、ジェームズ・ガン監督がDC映画を作ること、それも1作目が本当にとほほ……な出来だった「スーサイドスクワッド」のまさかのリブート、ということを聞いて「ま~~じかよ!!」となり、「そんなん絶対観に行くじゃんかね」となるという、かなり上級者なので、アフターシックスジャンクション関係では宇多丸さんや三宅隆太監督がベスト3以内に入れ、リスナー投票部門で1位だった、というのも納得しました。
上記はさておき、「People Who Died」「Just A Gigolo」「Dirty work」の選曲のエモさにもってかれており、過去の名曲を自在に引用できる人に憧れます……。ちくしょう!!😢


4位 べイビーわるきゅーれ
池袋のシネマロサで観たのですが、『カメラを止めるな』公開当時の記憶があり、口コミで面白いと言われている映画をシネマロサに観に行く体験自体が懐かしく、それだけでワクワクしました。
が、本当に素晴らしかったですよね。主演2人の女優さんの演技とアクションがお見事だったほか、そもそも、社会に適合できないから殺し屋をやっている女子高生2人、という設定のおかしみと悲哀があり、何だか胸を掴まれました。
アフターシックスジャンクションに届いたメールによると、阪元裕吾監督は「今後も殺し屋映画作りを頑張ります」という意気込みだそうなので(なんじゃそれ笑)、次回作も本当に楽しみにしています!! 

 

3位 ドント・ルック・アップ
12月後半に、突如彗星のごとく現れた超絶面白映画(隕石を扱った映画だけにね!) ←全く、うまくない
すっごい楽しいと同時に、すっごい現実的じゃん……と思ってしまって、ブラックコメディとして高度すぎることに「アダム・マッケイの手腕、ここに極まれり」みたいなものを感じて、監督の同じ路線だと『マネー・ショート』や『バイス』がありましたが、ここに来てその路線が多くの人に向けたエンタメとして花開いた果実を頂いたことを、光栄に思いました(初めて気が付いたのですが『ブックスマート』も製作総指揮だったんですね。アップデートさ加減がすごい)。
出ているキャストの豪華さもすごく、主演のデカプリオ以下、どの人も美味しい役どころでしたが、個人的にMVPは大統領を演じたメリル・ストリープに差し上げたいです。72歳にしてこのピンヒールとドレスを着こなし、野球帽を被りながら「ドントルックアップ!」と踊るメリル・ストリープ……本当に素晴らしかった!!!

 

2位 DUNE/デューン 砂の惑星
総合的にバランスを取れていたように感じたので、2位にあげさせていただきました。原作の2/3まで映画化している、という話を聞いたのですが、大丈夫か、何も物語始まってないぞ……?!
リンチ版も知らず、原作の存在も知らなかった私にとっては、初DUNE体験となり、今作きっかけで『ホドロフスキーのDUNE』を見たこともまた、感謝したいです。

 

1位 偶然と想像
12月後半に、突如彗星のごとく現れた超絶面白映画。
「1億円10億円100億円かけなくたって、脚本や役者やカメラほか……がよければ、面白い映画は出来るんだ」ということを、改めて教えられたとともに、台詞(言葉)の力に揺さぶられました。

「私、行きます。そこまで無粋な女じゃないから。お茶代よろしくね」
「自分だけが知っている、自分の価値を抱きしめなくてはなりません」
「心が燃え立つものがないの。何にでもなれたはずなのに。時間にゆっくり殺されている」「あなたは人を元気づけることができるの。そのことは、忘れないで」
(以上、うろ覚え)

どの話も、過去の後悔や、傷つくことをテーマにしているのですが、どんなに悲劇に感じられても、辛くて絶望したくなっても、時間が経てば、必ず笑い飛ばせる日がくるんだということを教えられた気持ちになり、人生に希望を持ちました(それも、まったく見知らぬ他人との間に起きた偶然で、人生最高の日は作り出せるよ、という話だったので、本当に!)
あと、現時点で2回観たのですが、各短編、40分に感じられない短さにも、驚かされます。登場人物が2~3人と少ないながら、話が全く想像していない方向に転んでいくし、台詞が力強いので、咀嚼して味わっている間に、あっという間に40分経ったんだろうな、と思っています。
全7作品の最初の3作品ということですので、残り4つにも、大変期待しています。楽しみです。

 


【最後に】
今年もまた、『スワロウ』『プロミシング・ヤング・ウーマン』『最後の決闘裁判』『ラストナイト・イン・ソーホー』などなど、フェミニズム的な目線を持って作られた映画が沢山公開され、どれも素晴らしかったですが、残念ながら振り返ると、個人的なベスト10には入りませんでした……。
もう、色々な女性が傷ついているのは十分に知っているので、個人レベルでの復讐や許しや昇華ではなく、社会全体に牙をむく作品を観たいです。