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【雑文】自宅から徒歩1分の和菓子屋に、斉藤壮馬と毒蝮三太夫のサインがあった話

以上です(終了)

 

なんと、96日ぶりのブログ更新になってしまった。「映画感想ブログ」と銘打っている割に、直近の感想が『大怪獣のあとしまつ』で止まっているのが不甲斐ない。

この間に観た映画のなかでは、『THE BATMAN』『愛なのに』『TITAN』『シン・ウルトラマン』あたりに、鮮烈な印象を覚えた(変わり種では『シャドウ・イン・クラウド』)。まだ観れていないが、『犬王』が心から楽しみだ。

 

さて、掲題については以上で、(自宅バレを恐れずに書くと)私の自宅の周辺には、コンビニよりも近くに和菓子屋がある。創業約40年、いったい全体、誰が買うんだろうかと思うほど「ザ・昭和」な雰囲気。小汚く狭い和菓子屋だが(←本当に失礼)、大福、どら焼き、団子といった定番和菓子に加え、季節折々の練り切り、お稲荷さん、赤飯といったごはんもの、和三盆を使ったクッキー……等々、商品ラインナップが意外にも、幅広い。今の季節は、五月ということで柏餅3種類と、若鮎を押し出している。夜更かし眼をこすって、午前四時頃に通りかかると、小豆を炊く良い匂いが漂う。

電子マネーどころかクレジットカードも使えない店だが、コンビニよりも近くにある食料品店ということで、ポイントカードを作り、シコシコとポイントを貯めるくらいには、好きな店だった。ちなみに、先代であろうおじいちゃんが白衣姿で、私の家の前で路上喫煙をしている姿を度々見かける。和菓子職人が煙草を吸っていて大丈夫なのかとツッコミたくなるが(モラル云々ではなく「味覚が鈍くならない?」という疑問)、そこも含めて、可愛らしい店だった。

 

先日、両親が洒落乙なイタリアンを奢ってくれるということで、我が家では定番となっている「娘からの御礼の品」として、いつものように自宅から徒歩1分のこの和菓子屋へ行き、適当な菓子をみつくろった。

「あずきダックワース二つと、若鮎一つ、レジ袋もお願いします」

この店は、さすが時流に取り残されていることもあって、レジ袋は無料だ。

「ご自宅用ですか?」「えっと、はい、それでいいです(?)」

若干、手先が不器用な当代が(和菓子屋の当代としてどうなんだろうか)、指定した菓子を紙袋に詰め、紙袋を不器用にセロハンテープで止めるのを横目に、私はふと、レジの奥に色紙が飾ってあるのを発見した。

そこには、十枚弱の色紙が、色あせた壁に飾ってあった。立地含め、とてもじゃないが、メディアに取り上げられる店に思えない。「○○堂さんへ」。一枚一枚、眺めていくうち、私はどこか安心した。申し訳ないが、ほとんど知らない芸能人ばかりだったからだ。

 

……と思ったのは束の間だった。

色あせた壁に、斉藤壮馬と、毒蝮三太夫の、サイン入り色紙があった。

 

私の思考は停止した。

不器用な店主が、「ポイントカード、ここに判子を押しちゃいましたが、あってますかね?」と謎の質問を投げかけてきたが、「はい、なんでもいいです」と返事をした。完全に上の空だ。

 

とにかく衝撃だったのは、斉藤壮馬のサインだった。斉藤壮馬。人気声優。斉藤氏ファンには申し訳ないが、これまで氏が出演する作品にふれてこなかった私にとって、彼はヒプノシスマイクの夢野幻太郎だった。 

……え、ってことは、この店、夢野が来たってこと?!?!(※斉藤氏が来ています) 

現実と妄想の境目が、一気に曖昧になった。

 

そこにとどめをさしたのが、毒蝮三太夫のサイン色紙だった。毒蝮三太夫についてもまた、薄い落語ファンとして、名前や芸風はもちろん存じ上げていたし、どこかで高座も見たことがある気がする(薄!)。斉藤壮馬毒蝮三太夫のサインが、自宅から徒歩1分の和菓子屋にあったことに、大いに混乱した。そして、妄想が展開した。

 

 

雪解けのごとき尊顔を持つ人気小説家・夢野幻太郎は、根暗で陰湿でひねくれた性格(※私の解釈です)に反し、雑誌などでの露出記事需要が多い。断り切れない編集者からの持ちかけで、おさんぽグラビア企画に強制参加させられた夢野は、興味ゼロの街をしぶしぶ歩き、汚い和菓子屋に入った。

「小生は、ナウでヤングなシブヤディビジョンのメンバーなので、スイーツはタピオカかマリトッツォしか食べないでありんす~。……まぁ、嘘ですけど」「和服キャラだから和菓子が好きだろうと思う想像力の貧しさ、どうかと思います」

編集相手にゴネる幻太郎。ありありと浮かぶようだ。

ところが、その小汚い店の壁には、色あせながらも誇らしげに、毒蝮三太夫のサイン色紙が飾られていた。そこで、夢野のテンションは一気にあがった。周りが引くほどノリノリで、自分もまた色紙を送りたいとゴネた。若手スタッフが、近場のスーパーで何とか色紙を調達し、事なきを得た。

 

~完~

 

 

 

自宅から徒歩1分の和菓子屋に、斉藤壮馬毒蝮三太夫のサインがあった。これから半年くらい、思い出しては「世界は捨てたもんじゃない」と、元気をもらえそうな事件だ。

世界はwonderであふれている。