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ネタバレ有【感想】『フリー・ガイ』:全方位向け優等生作品、だからちょっと物足りない

ライアン・レイノルズ主演の劇場公開新作映画、『フリー・ガイ』を観た。

ルール無用のオンライン参加型アクションゲーム「フリー・シティ」。銀行の窓口係として強盗に襲われる毎日を繰り返していたガイは、謎の女性モロトフ・ガールとの出会いをきっかけに、退屈な日常に疑問を抱きはじめる。ついに強盗に反撃した彼は、この世界はビデオゲームの中で、自分はそのモブキャラだと気づく。

フリー・ガイ : 作品情報 - 映画.com

結構前から映画館の予告に流れていたような気がするが、コロナによる公開延期を受け、「えー、結局ほんとに公開するのかな……」と思っていたうちに、しれっと公開されたような映画に思う(違っていたらごめんなさい)。

ライアン・レイノルズといえば、グリーン・ランタンの失敗と、それを乗り越えた(?)『デッドプール』の大ヒットを受け、彼が主演映画という時点でほぼ満点が出てしまうほど好かれる大人気俳優さんだが、今回もまた、ライアン・レイノルズにあえてダサいモブキャラを当ててきたところに、それだけで企画の成功が約束されている映画だった。脚本や設定は注意が払われていて隙が無いし、アクションシーンの見せ場もたっぷりだし、加えてラブコメ要素。娯楽作として150%の良作だったと思う。

 

ただ、劇中見て思ったのが、この映画に出てくる殆どが、既にある映画で「どこかで見た……」となる要素や展開ばかりで、新鮮味を感じなかった(本当にすみません……)。たとえば、「フリー・シティ」でモブキャラを務めるガイとは別に、現実世界でのもう1人の主人公が勤務するゲーム会社「スナミ・スタジオ」では、いかにも下劣でワンマンなアントワンという社長が君臨しているのだが、このアントワンの描写が「こういう社長がいたら本当に最悪でしょ」という、どこかで見たことがある雰囲気ばかりで、物足りなかった。そんな感じで、本作の想像力全体がどこか、物足りない(「フリー・シティ」の世界では「ヒーロー」とされている「サングラスピープル」たちが、現実的にはただのゲーマーであり、殺人含むモブへの悪行を働いている……という設定も、ヒーロー批判だったり「こんなに毒気があるんです!」といった目配せは感じるが、だったら、もっと流血を見せてほしい、などなど)。巷では『トゥルーマン・ショー』や『レディ・プレイヤー1』(や『ピクセル』や『シュガーラッシュ』など)と比較されているようだが、個人的には『LEGO ムービー』が、毒気の強さや、主人公がモブであることを活かした映画だったしテーマも共通していたということで、今作に1番近いような気がした。だったら『LEGO ムービー』をもう1回、大きなスクリーンで見たいかな……と思ってしまったというのが、今作への正直な感想だった。

 

映画の終盤、窮地に陥ったガイが、突然アベンジャーズの武器(キャプテンアメリカの盾やハルクの腕)や、ライトセーバーを出してきて、それだけが今作鑑賞中唯一、意表を突かれたのだが(特にいきなりキャップの盾が出てきた時にまさかでアベンジャーズの音楽もかかり、鳥肌がたった)、それは今作を製作した20世紀フォックスがディズニーに買収されたからこそ、ディズニー傘下にいるマーベルやスターウォーズネタを自由に使えるようになった……ということで、今作ならではの面白さではない。瞬間的に「わ!」と嬉しく驚いたものの「20世紀フォックスなくなっちゃった(※なくなってない)んだなぁ……」と、現実に引き戻され、寂しくなってしまった。最終兵器が、たとえばガイの”好物”という「バブルガムアイスクリーム」だったら、500億点の映画だった。