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映画の感想やポエムなど

【感想】映画『少年の君』

世間的に大評判の作品。

全体的な想像力としては、一緒に観に行った知人が、鑑賞後に「シリアス版『ハニーレモンソーダ』ではないか」と言っていたのを「その通り!」と思ってしまった(だからあなたと一緒に映画を観るのが大好き、いつもありがとう……)。ただもちろん、本作の主人公男女が、10代にして直面せざるを得ない格差社会の現実(一方は過酷な受験戦争、一方はロクな教育を受けられずチンピラ稼業)の「シリアス」さと、それゆえの、立場が一見真反対の二人が急速に心を惹かれあう顛末には、描写が丁寧なこともあって、納得感を覚えた。

 

一点、今作で凄いと思ったことがあった。終盤、ヒロインのチェン・ニェンが、髪を刈られ裸体を撮られるという酷い虐めにあった帰りに、シャオベイ少年が取った対応だ。

よく(?)映画で、「奥さんや彼女がレイプ等にあった男性」というシチュエーションに対し、犯人への私刑に走る男性や、逆に、レイプにあった女性の心の痛みの重さに耐えられず逃亡する男性……はあるのだが、この映画のシャオベイ少年は、チェン・ニェンの髪をバリカンで整えてあげると同時に、自らの髪も彼女と同じくらい刈上げる、という行動に出た。「あなたが受けた苦しみは、私にとっても同じくらい苦しく辛い」と、口で言うことは簡単だが、実際にどれだけ当人の苦痛を想像し、口だけではない本当の助けになりたいと願うことについて、これほど明快な行動はないと思う。

こうした「痛みの共有」は、どちらかというと「女性」が得意な分野のような気がしていたが、この映画ではシャオベイ少年がその役を負っていた点を、印象深く思った。