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面白いことを考える人がいる:『マトリックス レザレクションズ』予習のために映画『マトリックス』を初めて全部見た

掲題がすべてですが、1991年生れの私は『マトリックス』公開当時は、劇場版『ポケットモンスター』の「ミュウツーの逆襲」「ルギア爆誕」「結晶塔の帝王 ENTEI」などにキャッキャウフフしていて、物心ついて映画が好きになってからも、『AKIRA』『ブレードランナー』『攻殻機動隊』は見つつ、なぜかマトリックスは見ていなかった……
(正確には、1回観かけたことがあったのだが、途中どうもキツくて、ネオがモーフィアスを奪還する最後の突撃を始める直前でリタイアしてしまって、全部見たことがなかった)

 

というわけで、今週の2021年最後の宇多丸さん「ムービーウォッチメン」の課題映画に、『マトリックス レザレクションズ』が当たってしまったこともあり、会社の昼休みなどを利用して、細切れな視聴になりましたが(どういう会社員やねん)、『マトリックス』1作目をちゃんと全部見てみました。

ちゃんと全部見たよ!!(心の叫び)

 

 

~~以下、ネタバレ有~~

 

 

1度観かけて挫折した時と同じく、女性の扱いが今の時代にあっていないのが、辛い。
あんなに強くてカッコいいトリニティが、問答無用でネオに惚れていく理由が、いまいちよくわからず(まぁ目の前に、上司が救世主と信じてやまないキアヌ・リーヴスがいたら、好きになっちゃうか……?)。しかも最後まで観たら、トリニティからネオへの愛がこの作品の肝になっていて、「なんじゃそりゃ」でした。キスで目覚めるキアヌ・リーヴス、白雪姫か?!?!
でも、トリニティが受けた予言が「私が愛した男が救世主」で、そのおかげでネオが救世主に覚醒する、というロジックは(異性愛の成就をめざすラブコメ志向について譲歩する必要ありますが)設定としてはとてもロマンチックであり、「面白いこと考えるなぁ」と思った。

 

また挫折した時は、キアヌ・リーヴスがとんでもカンフー修行をやっていて「何だこれ」となっちゃったのですが、本作品のアクションの見せ場は、ネオがモーフィアスを奪還する特攻でした。私が挫折した後の出来事だったのですね!(「マトリックスといえば!」で色んな人に通じる、アイコニック的な銃弾の避け方も、この戦いで出てくる)。最後の特攻については「銃をくれ、どっさりと(Guns, lots of guns)」からの映像にはじまり、まぁ面白い!!
「いや、カッコいいけどそんなヒラヒラした服で戦いにいってどうするねん(だし、対照的になぜ今コート脱いでタンクトップになる必要があったの……がわからん)」「下っ端相手に弾を打ちすぎ」「そんなクルクルとアクロバティックな避け方して現実的に効率がいいんだろうか」などなどなどなどなどなど、ビジュアルの外連味に対し、突っ込みたくなるところ満載でした(ヘリコプターがあそこにあったことを計算して動いていたのか、モーフィアスがいるフロアに向かって機関銃打ちまくるのは何なのか、など、作戦自体が場当たりに見えてしまって「この人たちは大丈夫なのか……」と思った)。それでも、そうしたしょうもないツッコミを凌駕する、圧倒的なビジュアル的面白さが目に楽しく、「面白いこと考えるなぁ」と思った。

 

あとは、全体的にもうちょっと哲学的な話なのかと思ったら、海賊みたいな仲間たち、ミレニアム・ファルコンみたいな戦艦、虫みたいな機械、若い女性に飢えた気持ち悪いおっさんによる三角関係(?)的なやつ、と、かなり俗っぽいところも、1回目見て「ええ、そういう感じなの……」とテンションが下がりましたが、そこは2回目なので割り切り、観ることができました。
なんでこう、意識がない美女の身体に、ニヤニヤしながらべたべた触る気持ち悪いおっさんを出しておきながら、エージェントスミスのようなキレッキレのアイデアを考え出せるのか。作品全体が、どこまで考えて作られているのかよくわからない。極度にスタイリッシュなアイデアが降りてきつつも、世界観全体を構築する強度はない作り手なのではないかと思ってしまった。(※盛大に、仕事などでの私に対するブーメランが来る感想です)

 

そもそも、身も蓋もない話ですが、『マトリックス』の設定自体に、「そんな話ほんとじゃないじゃん!」と反発したくなり、この設定下の世界がこの先どうなろうと、ちょっとどうでもいいかな……と思わなくもない、というテンションですが(しかも待ち受けているのが賛否両論の『レザレクションズ』……)、もうちょっと頑張って、『マトリックス リローデッド』『マトリックス レボリューションズ』も見てみようと思います。

 

やはり、インターネットが普及しだしたばかりの20年前にこれを考えたこと、特に、ビジュアルの面白さが凄い。黒と緑を基調に選んでいるセンスも好き、特に蛍光深緑色は、アイコンとして空白そう(有名な縦コードの絵は、寿司のレシピをシャフリングしたという噂だという、なんじゃそりゃ)。
総じて、なんだか変わった映画だなぁ、という印象でした。1999年当時、これをリアルタイムで映画館で観て大変衝撃を受けた人が、羨ましいです。

 

以上、ある一要素だけに突出したら歴史に名を遺すポエムを作れる人が、現実と違う世界ルールを作ろうとすると迷走するかもしれないことに対して、ひがみ1500000000%のポエム感想でした………

 

↓ 『マトリックス レザレクションズ』の予告編。

マトリックス』では、ハゲ頭となってもなお美しかったキアヌ・リーヴス(当時35歳?)が、御年57歳、ビジュアルが完全にジョン・ウィックと化していることについて、それも織込済の映画になっているんだろうか。

 

なお、この予告編に使われている楽曲、映画の予告編好きとして、とても好きです。ラビット(兎)は1作目『マトリックス』でも作品世界へ誘導してくれる意味深モチーフとして良い仕事をしていたので、そこからこうした素敵な曲を持ってくる洋楽引き出しが、羨ましい限りです……(誰のことが??)